バイオグラフィー
「Piscatore 'e Pusilleco(プジレコの漁夫)」など数々の名曲の作詞を手がけたナポレターナの名詩人Ernesto
Murolo(エルネスト・ムーロロ・1876年4月4日ナポリ生まれ、1939年10月30日逝去)の息子で、1912年ナポリ生まれ。歌手として、ナポレターナの研究家として有名です。
歌手としては「Scalinatella(階段島)」(1948)、「Uocchie nire」(1951)、など数々のヒットを残し、作曲家としても「Sarrà
chi sa」(1959年ナポリ音楽祭優勝)、「Marechiaro marechiaro!」(1962年ナポリ音楽祭優勝)等を生み出しています。Ricordi社から出ている「Napoletana
vol.**」のCDはナポレターナの名作を曲が作られた年代順にほとんどギター1本で歌ったもので、全12枚におよび、イタリア語による詳細な解説付きで、資料としても大いに役立つアルバムです。
昔の活躍についてはとても短いページでは紹介し切れませんので、近年の活動に目を移しましょう。1990年ルーチォ・ダッラやムーロロを尊敬する同じナポリ出身のカンタウトーレのエンツォ・グラニャニェッロなども参加したアルバム「'Na voce 'na chitarra」、さらに彼の生誕80年を記念して1992年にファブリツィオ・デ・アンドレやミア・マルティーニ、エンツォ・グラニャニェッロ、ペッピーノ・ディ・カプリなど豪華なゲストが参加して作られたアルバム「Ottantavogliadicantare」を発売。1993年「L'italia
è bbella」でサンレモ音楽祭に出場して同名のアルバムを発売。さらに、アマリア・ロドリゲスと共演した「Anema
e core」(1994)、ドメニコ・モドゥーニョ追悼盤「Tu si' 'na cosa grande」(1994)、ピーノ・ダニエーレのプロデュースによる「And friends」(1995)など数々の名盤を残し、永年にわたる功績が称えられて2002年のサンレモ音楽祭において「Premio
alla carriera」が贈られました。
しかし、2003年3月に91歳でこの世を去りました。
アルバム紹介
Roberto Murolo 「Ho sognato di cantare」(2002)
上述の通り、ムーロロには永年にわたる功績が称えられて2002年のサンレモ音楽祭において「Premio
alla carriera」が贈られました。
本作は彼の生誕90年を記念して制作されたもので、タイトルは「私は歌うことを夢見た」との意。全12曲新曲によるものです。曲は従来のナポレターナと同様に愛、想い出、夢、海、そしてナポリをテーマにアコースティックなアレンジで歌ったものです。アレンジはジジ・デ・リエンツォ(Gigi
De Rienzo)、ジョー・アモルーゾ(Joe Amoruso)、エンツォ・グラニャニェッロ(Enzo Gragnaniello)などといった一流ミュージシャンが担当し、特にジジ・デ・リエンツォは哀愁を帯びたギターが印象的な2.「Ammore」、サックスも加わった9.「C'
´aggia fa'」など7曲を担当しています。サンレモでは1.「'Mbriacame」が会場に流れ、ロベルトは自宅からの中継によって元気な姿を見せてくれました。
90歳でこのような温もりを感じさせる素晴らしいヴォーカルを披露するロベルトに、心から拍手を送りたいと思います。
(CAROSELLO CARSH 01-2)
Roberto Murolo 「And friends」 (1995)
ナポリ出身でイタリアを代表するカンタウトーレのピーノ・ダニエーレもムーロロをとても尊敬しています。ダニエーレと映画「イル・ポスティーノ」が遺作となった俳優マッシモ・トロイージとが野生動物保護のために製作したビデオ「Daniele
& Troisi」にもムーロロはゲスト出演していました。本作はそのピーノ・ダニエーレのプロデュース、アレンジによるもので、1.「Dicitencello
vuje(彼の人に伝えて)」などの伝統的ナポレターナ5曲と、3.「Sta malatia」、9.「Napule
é」などのダニエーレの曲4曲を取り上げています。録音時間が短いのが残念ですが、この頃のムーロロは実に多作だったので目をつむりましょう。
(BMG RICORDI CDMRL 302832)
Roberto Murolo 「Tu si' 'na cosa grande Tributo a Domenico Modugno」(1994)
本作は1994年に他界したドメニコ・モドゥーニョのナポレターナ作品をカヴァーしたものです。モドゥーニョというと、1958年にサンレモ音楽祭で優勝してカンツォーネ界に旋風を巻き起こした「ヴォラーレ(Nel
blu dipinto di blu)」が有名ですが、数多くのナポレターナを作曲しています。日本では「素敵なあなた」で知られるタイトル曲3.のほか、2.「Io,mamette
e tu」、6.「Resta cu'mme」、7.「Lazzarella」、9.「Strada 'nfosa」などが取り上げられています。それぞれの曲にゲストが参加しており、主なところでは1.「'O
ccaffe'」、4.「Nisciuno po' sape'」ではエンツォ・グラニャニェッロが、3.ではピエトラ・モンテコルヴィーノが、5.「Pasqualino maragia'」ではN.C.C.Pが、6.ではリーナ・サストリが参加しています。なお、プロデュースはナンド・コペット(Nando
Coppeto)とアドリアーノ・ペンニーノ(Adriano Pennino)。
全体的にアドリアーノ・ペンニーノによるエスニックなアレンジが施されており、古臭さは全く感じられず、意欲的な作品となっています。
(Mercury 526 476-2)
Roberto Murolo 「Anema e core」 (1994)
こちらは4.「Voce 'e notte(夜の声)」、9.「Passione(情熱)」、12.「Malafemmena(悪い女)」、15.「'O
surdato 'nnammurato(恋する兵士)」などナポレターナの名曲を再録したもので、タイトル曲3.と6.「Dicitencelle
vuie(彼の人に伝えて)」ではポルトガルのファドの女王アマリア・ロドリゲス(1999.10.6逝去)がゲスト参加しています。クラシック、アコースティック・ギターやポルトガル・ギター、マンドロンチェロなど伝統的ナポレターナにふさわしい楽器を使用しており、ナポレターナの入門編としても最適なアルバムです。
(Mercury 522 475-2)
Roberto Murolo 「L'Italia è bbella」(1993)
ロベルト・ムーロロの1993年発表のアルバムで、タイトル曲1.は同年サンレモ音楽祭に参加したときの曲です。サンレモでは歌詞を見ながらの歌唱でしたが、80歳を超えた彼が生で歌う姿は感動を与えてくれました。その他は新しい曲とナポレターナの名曲から構成され、エンツォ・グラニャニェッロの作曲で彼も参加している2.「Vieneme」、4.「Niente
se fa'」、ピーノダニエーレとファビオ・コンカートの共作曲でファビオもゲスト参加している3.「Canzone di Laura」やミア・マルティーニとのデュエット7.「Te voglio bene assaje(激しく愛す)」などが収録されています。
この頃のムーロロは優れたミュージシャンやゲストに恵まれて、毎年のようにアルバムを出しており、本作もその1枚です。
(Mercury 514504-2)
Roberto Murolo 「Ottantavogliadicantare」 (1992)
上述のようにムーロロの生誕80年を記念して製作されたアルバムで、タイトルは「Ottanta(80歳)」、「voglia(望み)」、「di
cantare(歌うこと)」という単語をひとつにした造語で「80歳、歌う望み」との意味。オープニングのファブリツィオ・デ・アンドレの「Don Raffaè(ドン・ラファエ)」ではデ・アンドレ自身もゲスト参加。そして、近年稀に見るナポレターナのヒット曲となった2.「Cu'mme」と、伝統的なナポレターナ7.「'O
marenariello(舟人の歌)」はミア・マルティーニとのデュエット。そのデュエット相手の2人はすでに他界してしまっているというのは複雑な思いです。3.「Basta
'na notte」ではカプリ島出身のスター、ペッピーノ・ディ・カプリが、4.「Cercanno 'nzuonno」ではエンツォ・グラニャニェッロが、6.「'Na tazzulella 'e caffè」ではレンツォ・アルボーレがゲスト参加。さらに、9.「'Na voce antica」ではブラジルのトッキーニョ、10.「Quanta bucie」ではナポリの女性歌手リーナ・サストゥリが参加と、ゲストの顔ぶれが超豪華です。曲の方もムーロロの淡々とした歌を地元ナポリのミュージシャンがバック・アップして素晴らしい出来映えです。
(CGD 9031 76469-2)
Roberto Murolo 「'Na voce 'na chitarra」 (1990)
ロベルト・ムーロロのデビュー50年記念アルバム。と、いうことは意外とデビューは遅かったのですね。もともと1989年にマッシモ・ラニエーリが歌った1.「'Sti canzone」ではマッシモ・ヴォルペがアレンジを担当して女性歌手コンシリア・リッチァルディが参加。彼女は兄のギタリスト・アレンジャーのペッペ・リッチァルディと共に本作の数曲に参加しています。ルーチォ・ダッラの名作4.「Caruso(カルーゾ)」ではダッラ自身がピアノで参加。エンツォ・グラニャニェッロも6.「'Sta musica」、10.「L'ammore ca nun vene」で作詞・作曲・アレンジ・ギターなどで協力といった具合にムーロロを尊敬する後輩ミュージシャンたちが全面的にバック・アップしています。歌詞カードに出ているムーロロの幸せそうな笑顔を見るとこちらも心が和みます。曲の方もオリジナルの新曲、13.「'Na
sera 'e Maggio(五月の夜)」などのナポレターナの名曲、そしてジーノ・パオーリの9.「Senza fine」などバラエティーに富んでおり、18曲たっぷりと楽しめます。
(SUGAR 508 303-2)